房州めしと生モノ

2020.07.31

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「房州」をご存知ですか?
千葉県の房総半島南部にある3市1町(館山市・南房総市・鴨川市・鋸南町)は明治時代まで「安房国(あわのくに)」という地方行政区分でした。
その別称が「c(ぼうしゅう)」で、地元の方は今でも親しみを込めてその呼び名を使っています。

この土地に住む人たちが「房州人はあばら骨が1本少ない」という言い回しでユニークに皮肉ったり、自虐ネタのように話すのを聞くことがあります。
他人と競い合わない、のんびり屋さん、あまり自己主張しないなどの気質を持っていて、それには穏やかな土地の形状や気候が関係しているようです。

都市部から車や高速バスで東京湾アクアラインを渡ると約1時間半で来られて、アクセスがとってもいい観光リゾート地ということもあり、キャンプや農作物の収穫体験、ツーリングやサーフィンなどのアウトドア趣味、休日のドライブなどでのんびり訪れた事がある人も多いのではないでしょうか。

房総半島に初上陸
当時わたしは東京で制作ディレクターをしていて忙しい日々を送っていました。
たまたま友人から誘われた休日のドライブではじめて房総半島を訪れ、久しぶりに見る美しい田んぼの景色に大きく息を吸い込み心底リラックス。

「東京からこんなに近いのに、実家に帰省したみたいに安心する」
そう感じたのを鮮明に覚えています。

その時にお会いした地元の方からキャンプに誘われたのがきっかけとなり、車中泊したり、古民家に泊めてもらいながら趣味を楽しんだあとは地元の食材を広げての宴会。
わたしはもうすっかり房総半島の虜になっていました。

寝ても覚めても房総半島

朝の満員電車に揉みくちゃにされながら思う事は、どうせ毎週のように行くんだからいっそのこと引っ越しちゃえないかなと、そう考えてるだけでワクワク。
木更津からだと品川駅まで高速バスで1時間ちょっとで、しかもゆっくり座って毎日通える。家賃も安いし週末のガソリン代もうく。何より今の通勤時間と大して変わらないじゃない。

この頃すでに気持ちは早くもアクアラインの向こうにあったように思います。

想いは膨らみ結局1年半ほど木更津から東京の会社に通いましたが、想像していた以上に楽な通勤タイムだったので本当にお勧めです。

フリーの映像クリエイターとして独立

その後、念願だった独立をきっかけにお世話になった会社を辞め、遂に完全に房総半島へ移住したという訳。

房総半島では新しい人々と出会い、豊かな自然の中で思い切り遊びました。
そんな中で商売道具のカメラは片時も離さず撮影熱はどんどん高まり、最も自然が美しく根っからの房州人が被写体となる最南端へ、日の出前から日が暮れるまで撮影することが多くなりました。

まるで渡り鳥のように、撮影場所を求めて。

そのころ新たに知り合った地元の人が教えてくれた「地域おこし協力隊」への応募を機に、館山市へ移り住むことになったのですが、ここだけの話し「昭和の戦隊モノみたいなネーミングが嫌っ!」と尻込みしていました。
でもまあ本来の目的は地域に入り込んで撮影をすることだし、今ではやって良かったなと思っています。

「知られざる食材の宝庫」
館山市での任務はわたしの得意分野を活かして地域内外に向けて「たてやまの食の魅力」を十分に知ってもらうことです。
しかし人に伝えるためには「まず自分が知るべし!」ということで、手あたり次第に地元の農家さんたちや地域食材を積極的に扱う飲食店を日々取材していく中で、この地の食に関する大きな特徴が見えてきました。

三方を海で囲まれた半島ならではの地形で海岸線に流れる黒潮がたくさんの恵みもたらし、年間を通して温暖な気候と豊かな自然に恵まれていることで、色んな種類の農産物が産まれる。
しかも面白いことに平地の面積が狭いことと温暖な気候が、少量多品種という他にない特徴を生み出しているではありませんか!
全国的にもこのような地域は他にないのだそう。

確かに車で近所を走っていると、海、山、田畑と景色がどんどん変化します。
それこそ地域の生産者を取材していると、ここでは食材が全部揃ってしまうんです。

私はそんな房州の美味しい食材や料理をひっくるめて勝手に『房州めし』と名付けて取材を進めることにしました。気に入った友達にあだ名をつけるのと同じノリです。

房州人にとっての「房州めし」今と昔

年間を通して地域の食を取材する中で海の幸、山の幸が豊富なこの地では、昔から地産地消として地元の人々は地域の食材を食べていると聞きました。
まさに憧れの田舎象ですが、現代はというと。

近所の大型スーパーに地域食材はほとんどなく、他県からか外国のものがズラリと並んでて、現代の房州人は正直あまり地産地消してない気がする・・・
もちろん地元食材が買える道の駅は点在していますが、大型スーパーの方が活気にあふれています・・・悶々
そのことについてはまた次の機会に書きますが、とにかく実際に地域に住んでみて徐々に分かっていくことは多くあって、外から取材に来たわけではなく中の人としてドキュメンタリーで伝えられることが今の生活の一番の面白みです。
房州の食材はどう育てられて、どこに売られていくのか、どんな人が料理して、誰が食べるのか。

撮影も編集も、新鮮がいい!
食材と同じ生モノなんです。

わたしの愛車は移動する撮影スタジオであり編集室でもあり、機材を積み込んで日常的に近所の「食」をぐるぐると取材して映像制作の全てを当日のうちにその場で済ませることができます。

映像も情報もわたしは食材と同じ生モノだといつも考えていて、これからも房州の旬な食「房州めし」の魅力を新鮮なうちに沢山お届けしたいと思っています。
それがこの地に移住した私にしかできないことだと思うから。

この記事の著者のプロフィール

おかじ

鹿児島で営業職を10年ほど勤務の後、デザイナーを目指して2006年に上京。 広告デザインや宣伝広報の企画・制作・ブランディングに従事。 中でも映像制作ディレクターとして活動するうちに映像の面白さに惹かれ、2012年に映像制作会社に転職。 そこで新しく社内でデジタルサイネージのインタラクティブ部門を立ち上げ3年間かけて多くのコンテンツを開発し、世に送り出しました。 2018年3月、房総半島を起点に映像制作を中心としたフリーランスとして独立。 「映像をもっと気軽に。」をコンセプトに、映像制作やグラフィックの制作活動はもちろんのこと、自ら運営管理する地域密着のローカル動画共有サイト『房TUBE』を運営しながら、館山市の食の魅力を伝える地域おこし協力隊として活躍中。

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