前編では、料理を活用した親子向け幼児教育サービス「ハクシノレシピ」(2021年4月以降サービス開始予定)の内容について紹介しました。
ハクシノレシピがどのような経緯で生まれて、どのように生まれ変わろうとしているのでしょうか。
「調理技術の向上」ではなく、子供の「能力」や「心」を育む
一般的な料理教室というのは、食材の切り方や火の通し方、調味料を入れる順番などの“料理のイロハ”を通じて調理技術の基礎を学び、さまざまなレシピを実際に作ることでその技術を習得していくのが目的です。しかしハクシノレシピは「料理を活用した親子向けの幼児教育サービスであり、料理教室ではありません」とHacksii代表取締役社長の高橋未来氏は語ります。
ハクシノレシピを提供するHacksii代表取締役社長の高橋未来氏
「料理教室の目的が『調理技術の向上』であるのに対して、私達は子供の『能力』や『心』の育成を目的としています。具体的には『創造性を発揮できる人を育てる』というミッションの下にサービスを開発しています」(高橋氏)
Hacksiiが約170人を対象にアンケート調査を行ったところ、自己肯定感が高い人は、幼少期に親に対して「意見を尊重してくれる」、「自分を信頼してくれている」という印象を持っていたことが分かったそうです。
「逆に言うと、意見を尊重してくれていない、自分を信頼してくれていないという印象を親に対して持っていた人は、自己肯定感が育まれないという傾向があることが分かります」(高橋氏)
自己肯定感が高い人が幼少期に親に対して持っていた印象
そこには「良い子であるべき」、「良い学校へ行くべき」、「良い会社へ入社すべき」、「良い母親であるべき」という社会の呪縛があるのだと高橋氏は言います。
世の中の保護者は「手間暇かけて料理を作らなければならない」といった価値観から抜け出せず、子育てにおいては「子供とどう接すればいいか分からない」と悩む。そんな呪縛から抜け出し切れずに揺れ動いている保護者と子供たちの親子コミュニケーションをサポートする必要性に気付いて生まれたのがハクシノレシピなのだそうです。
自己肯定感を育むコミュニケーション方法を親に“インストール”し、それを子供に対して実践することで、子供の自己肯定感を育むというのがハクシノレシピのコンセプトです
スタート当初のハクシノレシピは、講師の「エプロン先生」を派遣して1対1で子供に対してレッスンを行う自宅訪問型の幼児教育サービスでした。
「子供を絶対に否定しないコミュニケーションを親がするのは難しいこともあり、それをエプロン先生が引き受けていました。でも、レッスンを通じてお子さんが創造性を発揮できるようになっても、日常のちょっとしたことで振り出しにもとってしまうことがありました。そこで親子のコミュニケーションに着目し始めたのです」(高橋氏)
そうしたタイミングで新型コロナウイルスの感染拡大が起き、濃厚接触になってしまう自宅訪問型サービスは方向転換せざるを得ませんでした。親子間のコミュニケーションの課題を解決できるサービスを作るため、2020年4月にサービスを休止し、設計し直して生み出されたのが今回の親子向け幼児教育サービスというわけです。
レッスンの様子
「ユーザーの方からは再開を心待ちにしているというお声をいただき、親子のコミュニケーションの部分にコミットメントできるプログラムにできないかなと思って考えたのが今回のサービスです。コンセプトとは以前と同じですが、エプロン先生が引き受けていた「自己肯定感を育むコミュニケーション」を、親ができるようにサポートする役割をハクシノレシピが行う。そういう風にマインドチェンジしました。親子で同じ目線で楽しむという視点を持ってもらえるとうれしいですね」(高橋氏)
現在はモニターテスト中で、2021年4月からのサンプル版サービス提供を経て、2021年9月にはβ(ベータ)版(本番直前版)のサービスを開始する予定とのこと。
ハクシノレシピのサービス内容
音声付きスライドを見ながらレッスンを進めていき、
音声と発表動画をハクシノレシピに送付します
音声データと発表動画を基に、親子それぞれに対するフィードバックを行います
会員専用のコミュニティも用意されます
「今後は音声解析のAI開発に力を入れていき、コミュニケーションサポートの全自動化を目指します。そしてコンテンツの拡大を行い、5年後には会員数10万人規模のサービスを目指していきたいと考えています。私たちはハクシノレシピというサービスを通じて、『正解』や『当たり前』にとらわれない社会を作ります。そうすることで、きっと日本の食の選択肢が広がっていくはずだと思っています」(高橋氏)