創造AIによるクリエイティブ献立〜日本料理が少ないのはなぜか?技術的な課題とは?

2021.03.03

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毎日の工夫を凝らした献立を選んだり考えることは、食事そのものの楽しみや栄養のためにとても大切です。とはいえ、三食毎回続けていくのは忙しい生活を送るなかでは難しいでしょう。書籍やインターネットなどを通じてさまざまな献立アイディアを得ることができるといえども、自炊が億劫になってしまう原因の一つとなっています。その中で、昨今注目を集めるのが、AIという最先端技術を活かした、献立提案のサービスです。

 

現在提供されているサービスを俯瞰してみると、献立の”選択”と”創造”という二つの視点がみえてきます。すでに人によって考案された献立の中から、栄養学や好みの点から自分に最適なものを選びだしてくる”自動選択”サービス。もう一つは、今まで人が考えつかなかった全く新しいアイディアの献立を提供してくれる”創造”のサービス。

 

冷蔵庫に今ある食材で作れるもの、今夜食べたい気分の料理、栄養バランスを整えるための食事など考えることはたくさんあり、選ぶこと自体に思考を巡らせなくてはいけません。そこを自動化してるのがAI技術です。期待する食事を実現できる献立を、AIはそれらを満たす条件の中から最適なもの選びだしてくれます。献立というは、朝食、昼食(お弁当)、夕食の毎日繰り返す食事に、連続して提供する必要がありますので、選択の結果は一回限りではありません。1週間分まとめて考慮することもあり、選択とはいえパターンは複雑にならざるをえません。そういったすべての条件を含めて、人の代わりに、少しでも多くの量の情報を自動で整理、提供してくれるのがAIです。専門家でない限り、あらゆる献立情報を全て頭に入れておくこは不可能です。本を調べたりやWebサイトを検索する時間を肩代わりしてくれるだけでも大助かりでしょう。

 

一方で、まったく新しい献立を生み出しくれるのがAIによる創造。現在実現されもっとも有名なサービスに、IBMによって開発されたシェフ・ワトソンがあります。無数の公開されている献立の中から”材料の組み合わせ”という情報を自動的に抽出、それを活用して人間が思いつきそうもないまったく新しい材料の組み合わせを考案してくれるサービスです。最終的な調理をするのは人間となりますが、最初のきっかけとなる材料の組み合わせに意外性を提供しで、献立の創造につなげるのです。

 

AIが得意なことは、このような網羅的な検索にあり、そのためには莫大な量のデータを準備しておかなくてはなりません。今は、公開されている情報はインターネット上にあることも多く、かつては書籍にしかなった知識もデータベースとして管理できているので、AIに与えるデータも十分あります。さらにAIの中でも昨今大きく発展した技術に自然言語処理があり、昔は人間でしか理解できなかった文章の意味や概念も、(もちろん制限や条件の下)AIが抽出して人に役立てることができるのです。これにより”美味しい”という人間の主観的な感覚もデータ化して処理できるようになりました。

 

これら様々なAI技術が組み合わせったシェフ・ワトソンですが、もちろん、万能というわけではありません。特定のジャンル、例えば日本食に限定した中で、創造的な献立が作れるかというとそれは技術的に難しいところもあるようです。

 

日本食と呼ぶからにはそこには長い伝統や文化の中から自然と決められた、大きな枠としての”型”があります。ベースとなる味付けは、だし、調味料など大きな枠組みがあり、それぞれ中からさらに選べる具体的な材料があります。調味料において基本となるのは、塩、味噌、しょうゆの3種類のみです。ですので、組み合わせの中からの選択という点では、日本食という決められた型を外れた意外性をAIに求めるのはそもそも無理があるのでしょう。これは日本食だけに当てはまることではなく、一つの調理文化には決まった型があることが多く、その枠のなかでの微調整が、新しい献立の創造にもなったりすることがあるのです。人間には試行錯誤もできない無限な組み合わせの中から最適なものを優先順位付けしてくれるのが得意なAIです。AIは型の中ではその力が発揮しずらいのかもしれません。微妙な味加減を考慮しながら同時にまったく新しい献立を考えるというのは今のところ苦手なようです。

 

とはいえ、これはAIが現在利用している情報に限りがあるからであり、献立に関する情報をより細かく整理してAIに入力させることで将来的に日本食の中での献立創造も可能になると考えています。味付けのコツは、材料の選択だけはなくて、もちろん量も重要な要素です。だしなどにおいては、煮込み時間や温度において旨味成分の溶け出し方も変わるでしょう。日本食の献立は、単なる、素材の組み合わせではありません。そういったアナログな情報もAIに数値化し学習させることで、いつかはまったく新しい日本食献立が創造される可能性は十分あります。

 

AI技術は日々進歩しており、フードテックの世界で現在課題として考えらることも近い将来解決されることが期待されています。

この記事の著者のプロフィール

ピープルトラスト研究所

データサイエンティスト/ピープルアナリスト

この記事では、AIやデータサイエンスを元にした食に関する情報を紹介していきます。著者のピープルトラスト研究所は、人を対象にしたAIテクノロジーの研究や、データ分析をしている研究所です。Food Techをはじめ、HR TechやEdu Techなど幅広い領域で、人が幸福に暮らせるための研究を行っています。

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