インフラで変わる食。タイの屋台とサラダの話。

2021.03.16

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もう一昨年になりますが、仕事でタイ、バンコクに招待をいただき出かけてきました。とある日本有数の食品製造企業のレトルトカレーのラインと醤油醸造工場の視察でした。

 

タイにある日本の食品工場の見学

工場はバンコク市内からクルマで3時間ほどの場所にあるラヨーン県。巨大な工場団地のイースタンシーボード工業団地の中にありました。

工業団地内はモダンでクリーン、清潔で行き届いた環境でした。工場の増床の落成式にも参加させていただき、大変光栄でした。落成式はタイスタイルで行われ、大勢の僧侶がお祈りをしたり聖水をかけたり、寄進の儀式があったり建物に文字を刻んだりと、珍しい体験とタイという国でそこに溶け込みながらの経営に強く感銘を受けました。
式典が終わると食事をご用意いただき、そこで工場の責任者の方にお話をうかがうなど大変充実した時間になりました。

 

そんな時間を過ごしてバンコクに戻りました。

 

バンコクの外国人コミュニティとレストラン

2019年のバンコク、街は活気にあふれ、高級車も多く、住んでいる人々は笑顔にあふれていました。旅行者の感覚ですとここでやはりローカルフードが欲しいな、と思いますよね。実際わたしもおなじく思いました。タイ料理はもともと大好きです。

同じく好きなインド料理。南アジアと呼ばれるインド亜大陸周辺国はドライスパイス、そして東南アジア、タイを中心とした周辺はハーブがそれぞれ味や香りの決め方の中心になっています。どちらもいいものです。
首都バンコクには東京同様、いや、東京以上に外国の人々のコミュニティがあります。

 

以前バンコクにきた時に見に行ったゴープラム(南インドスタイルヒンドゥー教寺院の塔門)のまわりにはタミルの人々のコミュニティがあって大変においしいインド料理を食べました。ターバンを巻いたジャイナ教の人たちも見かけましたし、近くには寄進に使うミターイ(インドの生菓子)をキロ単位で売るスイーツショップもありました。

 

今回は知人のミュージシャン、早川大地さんと合流、彼がよく行くという2つあるインド人街のなかにあるスリランカ料理の店で食事とおしゃべりを楽しみました。少し食べて移動、アラブ人街へいって中東料理も楽しみました。

 

 

アラブ人街は大変に刺激的です。洋服も、家電や宝飾ひとつとってもわたしたちともタイの人ともセンスがまるで違っていて、おもしろい。カンドゥーラ(長い白の衣装)とゴトラ(頭にかぶる白い布)を身につけたアラブの男性(カンドゥーラ・ゴトラはUAEの呼び方)が大勢歩いていて強い異国情緒を感じました。
そんな楽しみ方もできるバンコクなのです。

 

モダン屋台文化

バンコクの屋台はシンガポールのホーカーズと並んで有名です。そんな屋台も2019年においては色々な変化もあるようです。ニュースでもバンコクの大きなナイトマーケットの撤廃など以前見ましたし(あれはどうなっただろうか)、ホーカーズも規制という話も聞こえます。

 

そんな中でアジアの都市部での2020年代の屋台村はなんだろうと考えた時、巨大ショッピングモールのフードコートのことを思い出しました。ローカルフードはもとより大手世界チェーンのハンバーガーやフライドチキンのようなアメリカンファストフード、ムスリム向けのローカルフードから和食まで、なんでもあります。

 

サラダと目玉焼き

そんな中で気がついたことがいくつかありました。ホテルに帰ろうと地下鉄に乗っていたのですがうっかりと乗り過ごしてしまい、目的地のいくつか先で降りたことがありました。引き返さねば、と思っていたのですが、バンコクの地下鉄駅はなかなか面白くて日本の「エキナカ」的なマーケットが駅ごとにありました。今日は疲れたし、少し何か食べるものを買ってホテルに帰ろうと考え、地下鉄駅併設のマーケットを見て歩きます。結構な規模のスーパーマーケットで、クラスで言うと成城石井のイメージ。価格よりもちょっといいもの、面白いものを売りにしているおしゃれな店です。

 

 

そこで驚いたのがサラダバー。広口のペーパーカップに好きなだけとってシュリンクで蓋をしてもらうシステムで計り売りになっていました。洒落た冷蔵ケースで温度管理されたパリッとフレッシュな野菜。きれいな西洋野菜やフルーツまでカバーしていて楽しくてたくさん買いました。

 

ホテルのそばに戻ってくると、そのそばに小さなオープンエアのマーケット、これは市場ですね。そういう場所もあってそこで惣菜を買いました。あ、パッカパオラーカオだ。ガパオごはん好きです。これも買おう。

 

他にもスイカを1/4カットで買ったりビールを買ったり。これが楽しくなって別の日は餃子を買ったり(珍しい焼き餃子のチェーン)と持ち帰りを楽しみました。

 

フレッシュ(生鮮)と流通

おどろいたのはガパオごはんに乗った目玉焼き。半熟だったんですよ。

 

バンコクで半熟目玉焼き。少し前からそんなふうだとは聞いていましたが。それと、先程のフレッシュサラダの当たり前感。
ホテルならいざ知らず、スーパーマーケットでサラダはちょっと驚きました。少し古いとは思いますが、なぜ驚いたのか。それは生鮮のものが当たり前に流通しているということ。
2020年代でそれをいうのは古いよとおっしゃる方も多いとは思いますが、それはおいておいてどうしてそう思ったのかを説明しますね。

 

昔のタイ・バンコクではサニーサイドアップ、半熟の目玉焼きなんて言う概念はありませんでした。みんな揚げ焼き、ターンオーバーでした。だって、危ないじゃないですか、半生のもの。お腹こわしちゃうかもしれません。同じくフレッシュサラダだってカットしてあるものを売ってるなんて。痛むし、どんな水で洗ったかわからないものを火を通さず食べるなんて。そうやって驚いたんですが、なぜそれが覆されたのか。それはインフラの整備です。

 

昔とは違う世界的な都市、バンコクは当たり前ですが電気も上下水道も整備され、快適な街です。冷凍、チルドの流通もあって各店舗に冷蔵冷凍庫もある。大きなチェーンから個人商店までそうなりました。だから暑い国ですが品質の担保ができるようになっています。新しいスタイルの食が生まれて当然なのだと感じます。

 

インフラと食文化

たとえば、国境を挟んだ2つの国があります。国境は海から1000マイル離れています。なのでA国はお魚を食べる食習慣がありません。しかしB国はお魚を食べるのです。隣同士の国でなぜそんな差が出たのか。それはインフラです。B国はたまたま国境まで流通網が整備されてある程度の経済力があるからその流通経路を通ってやってきたお魚を食卓にあげることができたのです。

 

食文化にはいくつかのレイヤーがあると考えています。地域の植生、民俗、宗教、経済、貿易。そんな要素を想像しながら食べる異国の料理はなかなか楽しいものですよ。

この記事の著者のプロフィール

飯塚敦/はぴい

フードジャーナリスト

食をテーマとしたライフスタイルブログ「カレーですよ。」に国内外のカレー実食レポート5000記事超の掲載。月刊誌にてカレー取材記事連載中。連載期間10年目は国内随一。TV、ラジオ、雑誌等メディア出演多数。著書に「カレーの本」「iPhone x Movieスタイル」等。はぴいオフィシャルサイトHP➡https://hapi3.net/

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