「いつから七面鳥を食べてる?」クリスマスディナーの歴史をたどる

2020.12.24

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気づけば、12月も後半に突入し、年の瀬が迫ってきているのを感じずにはいられない時期となった。なぜだか分からないが、いくつになっても”年末になるとワクワクしてしまう”という方も少なくないのではないだろうか。今風な言葉を借りると「テンションが上がる」といったところだろうか。

 

年末になると、街中がいつもの景色から様変わりし、少し違った”非日常”を感じることができるようになる。近くの商店街では夜になるとイルミネーションが灯り、スーパーマーケットや日用品店では鏡餅やしめ縄などの販売されるようになり、季節と時の変化を”非日常”の景色から感じられるようになる。大人になっても情緒溢れる街中と人々の雰囲気にノスタルジーを感じずにはいられないのではないだろうか。

 

 

この季節の風物詩の一つとして挙げられるのが、「クリスマス」ではないだろうか。欧米由来の文化ではあるが、日本でも昔からプレゼントを交換したり、みんなでお祝いをしたり、パーティーを開催したりと楽しまれている。しかし、ここで一つの疑問が浮かぶのが「いつからクリスマスディナーで七面鳥(チキン)を食べるようになったのだろうか?」ということだ。今回はそんなクリスマスに関する食文化について考えてみたい。

 

「クリスマスディナー」とは?

 

クリスマスディナーとは、その名の通りクリスマスの日に食べられる伝統料理や食事なことを意味する。世界各国でクリスマスディナーとして、いつもと違った食事が用意されるのは、クリスマス自体が祝日として位置付けられていることも理由としてある。

 

キリスト教の宗教的な話をすると、聖書に明記されていないキリストの誕生日を記念して礼拝を行う日を12月25日としている。その理由として、キリスト教が広まるよりもずっと前から、ヨーロッパ諸国のキリスト教圏の人々は”冬至”を「弱まった太陽が力を取り戻す日」とし、12月25日頃に”ユール”と言われる冬至を祝う祭を行っていたとされている。この冬至祭でご馳走が振る舞われていたことに、クリスマスディナーにご馳走を食べるという文化が紐づいていると言われている。スウェーデンやイギリスで食べられているクリスマスハムも、ゲルマン民族の風習が起源であると推測されており、ヨーロッパ諸国のキリスト教圏において古代から冬至に特別な料理を食べる風習があり、その文化が受け継がれているのだろう。

 

肉料理がメインディッシュとして振る舞われる

 

クリスマスディナーのメインディッシュといえば「肉」という印象が強い。実際に、一部の宗教上の都合で肉・卵・牛乳を食べない国々をのぞいて、「肉」をメインの料理としている国が多い。肉の種類は、日本でもお馴染みの鶏肉から、七面鳥・牛肉・豚肉、さらにはアヒルやガチョウまで様々だ。どのような肉料理を作るのかは、それぞれの国柄が出るといったところだ。

 

では、欧米諸国のクリスマスディナーの定番ともなった「七面鳥」はどのようなところにルーツがあるのだろうか?

ヨーロッパやアメリカ、カナダのクリスマスディナーを代表する料理の一つとして、今もなお「七面鳥」が親しまれている。しかし、実際には七面鳥は北米大陸が原産で、ヨーロッパに持ち込まれたのは15世紀頃からだった。それ以前はヨーロッパでのクリスマスディナーと言えばガチョウ料理が定番だった。七面鳥がアメリカ大陸から持ち込まれると、ヨーロッパでは”大きな鶏肉”としてブームとなった。当時、輸入されるほどの価値のある七面鳥は、一部の上流階級の方しか口にできない特別な肉として扱われた。その後、イギリス国内の富裕層の間でクリスマスの贅沢な食事の一つとして七面鳥が根づいていったのだ。

 

そんな、イギリスでは富裕層の贅沢品であった七面鳥だが、アメリカを中心とした北米地域では事情が違ったのだ。

北米には野生の七面鳥がウロウロしていた。クリスマスの贅沢ディナーにするには”ニワトリの肉は硬くて嫌だ”、”豚肉は普段から食べている”などと言う理由で、野生の七面鳥をメインディッシュに使用したと言われている。つまりは、アメリカではクリスマスディナーの七面鳥は、イギリスとは真逆の扱いをなされていたのだ。

 

その文化が日本に伝来したのは、あの有名な宣教師”フランシスコ・ザビエル”によるキリスト教の伝来の影響を色濃く受けている。当時、日本全国では外国からの文化を受け入れる事が容易でなかった時代だったが、明治維新以降は他国との貿易も盛んになり、「クリスマス」という概念が広まり始めたのだ。明治時代以降は、現代と同じようにクリスマス商戦が行われていたと言われている。

 

しかし、実際に七面鳥を入手し、料理することが非常に難しかったため、日本では”フライドチキン”や”ローストチキン”などがクリスマスの定番となっていったと言われている。現代でも、七面鳥の丸焼きを一般家庭で見ることは少なく、代変え品ではないが1970年代から、KFCが”クリスマスにはチキンを食べよう!”という広告を掲げてチキンを売り始めたことをきっかけに、「ケンタッキーフライドチキン」が日本の食卓には並ぶようになった。これは、日本で七面鳥を手に入れられなかった外国人がケンタッキーフライドチキンをクリスマスディナーにしたことに由来しているとも言われている。

 

 

我々が、日本に生を受けて以来、理想のクリスマスディナーの姿としては七面鳥の丸焼きがデカデカと食卓に並ぶ光景ではあるが、クリスマスディナーの中心として「フライドチキン」が食卓に並んでいた。何気なく頭で描いている、ある特別な1日の夕食の姿。そんな1日を遠い昔の同じ日にも、思い描いていた人々がいたのかと思うと、少しばかりではないノスタルジーを感じずにはいられないのではないだろうか。

この記事の著者のプロフィール

杉浦 雄貴

株式会社バンドオブブラザーズ 代表取締役

クリエイティブカンパニー株式会社バンドオブブラザーズを2017年に設立。ファッション好き・音楽好きというのを背景に、"食"にまつわる様々なカルチャーについての記事をお届けします。

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