注目が高まる「低温調理」とは

2021.01.19

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注目が高まる「低温調理」とは

電気圧力鍋やオーブンレンジ、グリル鍋などさまざまな調理家電が登場して人気になっていますが、ここ数年で注目度が高まっている調理家電の一つが「低温調理器」です。低温調理器というのは、味付けをしたお肉や魚などをジップロックなどのビニールバッグに入れて空気を抜き、一定の温度のお湯で長時間湯せんのように温めることで調理するというもの。電気圧力鍋やコンベクション(熱風循環)オーブンなどでも低温調理を実現するモデルはありますが、低温調理器というと家庭にある鍋などに入れて使うスティック型の製品を指します。


葉山社中が2020年9月にクラウドファンディングでの

予約販売を開始した低温調理器「BONIQ 2.0」

 

低温調理の魅力は、まず一言で言うと「まるで生のような、生に近い食感で肉を調理できる」という点にあります。1℃単位、1分単位で細かく温度と調理時間を制御(製品によります)できるため、調理をする人の経験や勘などに頼ることなく、いつでも同じ火加減(加熱具合)で肉などを調理できるのです。

 

例えばローストビーフなどの場合、新鮮な牛塊肉の外側をしっかりとフライパンなどで焼いて火を通せば、中が生に近い状態でもおいしく食べられるため、比較的手軽に作れる料理です。しかし本来はしっかりと中まで火を通しつつ、いわゆるレアの状態になるように仕上げたいものです。さらに難しいのがローストポークです。ローストビーフのように、中が生のように仕上げたいのですが、豚肉は牛肉と違ってしっかりと中まで殺菌しなければなりません。一定の温度と時間をかけてしっかりと中まで殺菌しつつ、生のような食感に仕上げるという至難の業を誰でも実現できるというのが、低温調理器が人気を得ている秘密というわけです。

 

低温調理の秘密はタンパク質の「熱変性」を抑えること

では、なぜ低温調理をした肉をおいしいと感じるのでしょうか。肉を加熱調理する場合、それらに多く含まれるタンパク質が熱によって変性して固くなります。生肉を焼いてステーキにしたり、魚を焼いて焼き魚にしたりすると、元のぐにゃぐにゃの状態から硬くなりますが、これが「タンパク質の変性」によって引き起こされたものです。

 

タンパク質のうち大きな割合を占めるのが「ミオシン」と「アクチン」という成分ですが、ミオシンが熱変性すると味が良くなるのに対し、アクチンが熱変性すると肉を硬くなってしまい、内部の水分を逃がして味が落ちてしまいます。ミオシンの熱変性が約50℃、アクチンは66℃くらいで変性し始めると言われているため、55℃以上、66℃未満で加熱すれば、肉や魚を生に近いような状態で楽しめるというわけです。

 

ただし、もう1つ重要なのが「殺菌」です。おいしいからといって、肉がしっかりと殺菌消毒されていなければ危険です。厚生労働省の「食品別の規格基準(食肉製品)」によると、肉塊の中心部を一定時間加熱する必要があるとしています。50℃の場合は580分(9時間40分)と長いのですが、55℃では21分、58℃では3分、60℃では1分となっています。「中心部」とあるため、冷蔵庫から出したばかりの肉と冷凍庫から出した肉では調理時間が異なりますが、十分に余裕を持って長時間加熱すれば、安心して楽しめるようになります。

 


低温調理で作った鶏ささみのマリネ(写真奥)と鶏ハム(写真右)、ローストポーク(写真手前)。生のように見えて、しっかりと殺菌処理が行われており、柔らかくてみずみずしいのが特徴です。

 

最近ではシャープの「ヘルシオ ホットクック」、ティファールの「ラクラ・クッカー コンパクト」など、低温調理機能を搭載する電気鍋も増えているので、興味がある方はそういった製品を使うのもおすすめです。

 


シャープの「水なし自動調理鍋 ヘルシオ ホットクック」

 


ティファールの「ラクラ・クッカー コンパクト 電気圧力鍋」

この記事の著者のプロフィール

安蔵靖志

Techジャーナリスト

一般財団法人家電製品協会認定 家電製品総合アドバイザー(プラチナグレード)、スマートマスター。AllAbout 家電ガイド。ビジネス・IT系出版社を経てフリーに。デジタル家電や生活家電に関連する記事を執筆するほか、家電のスペシャリストとしてテレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。KBCラジオ「キャイ~ンの家電ソムリエ」にレギュラー出演するほか、ラジオ番組の家電製品紹介コーナーの商品リサーチ・構成にも携わっている。

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