Vol.1 盛⼭貴⾏さん(シェフ)〜後編〜

2020.11.28

前編に続き、関屋英理子編集長が「conomeal(このみる)」のレシピアドバイザーを務める盛山貴行さんに直撃! インタビューで垣間見えたのは、盛山さんの料理人としてのこだわりや、AIにはない人間ならではの特長でした。「conomeal(このみる)」に期待することや、食の未来について、とことん語り尽くします。

人間には、AIにない「ひらめき」がある。

関屋盛山さんにお会いするたびに感心させられるのが、一皿一皿への手のかけ方です。以前お店に訪れたとき、料理に添えるべったら漬けを仕込むために、1週間以上かけて味の微調整を繰り返していると聞いて驚きました。こうした細やかな配慮こそが、料理人ならではの技だと思います。

盛山べったら漬けには自家製の米麹を使っているのですが、麹の発酵具合によって仕上がりの甘みが変わってきます。大根も、一本ごとに辛味の違いがある。だから、レシピ通りというわけにはいかず、自分の舌を頼りに細かな調整をしていくしかありません。こういった微調整は、AIには難しいですか?

関屋決められたルールのなかでしか動けないAIにとっては、難しい作業かもしれません。目の数や駒の数があらかじめ決まっている囲碁やチェスだと名人を打ち負かすほどのパフォーマンスを発揮しますが、料理にはイレギュラーがつきものです。

盛山その日の気温や湿度、仕入れた食材の状態、お客様の体調など、不確定な条件が山ほどあります。そのなかでいかに「おいしい一皿」を仕上げるかが、料理人の腕の見せどころです。

関屋盛山さんのお店に来ると、これらの対応力だけでなく、発想力も素晴らしいとつくづく感じます。先日ご提供いただいた、ベーコンを昆布で巻く作り置きレシピには驚かされました。「この組み合せで大丈夫かな?」と半信半疑で作ってみたら、本当においしかった。こうしたレシピのインスピレーションは、どこから湧いてくるのですか?

盛山最初は肉じゃがのレシピを考えていたのですが、「オーソドックスなものでは面白くない」と思ったのです。そこで、食材の組み合わせを試行錯誤して、思いもよらないレシピが完成しました。

関屋意外な組み合わせを思いつくのは、人間ならではですよね。これはAIの不得意分野で、現時点ではほぼできないといってもいい。今後も料理人ならではのひらめきを、たくさん伝授していただきたいです。

AIとともに、食の未来を明るくしたい。

関屋ほかにAIと料理人とでは、どんな違いがあると思いますか?

盛山AIは計算するものですが、私はほとんど計算をしません(笑)。恐らくAIがお店を開くとしたら、売上げを安定させるために、計算高く万人受けする料理を通年で提供するでしょう。けれども、料理人は季節によって提供する料理をあえて変えます。夏の鮎、冬のフグ、アンコウなど、その時期にしか味わえない旬のおいしさを知っているからです。季節ごとの売上げが乱高下してしまっても、おいしさを追求する。それが料理人の性のような気がします。
それと、もうひとつ。料理人はAIと違って失敗をしますが、そこから思わぬ「おいしさ」を発見することもできる。これも大きな違いだと思います。

関屋「ちょっと焦げたけど、それがかえっておいしい」という発見に巡り会えるのも、人間ならではですよね。それでは最後に、盛山さんが「conomeal(このみる)に期待することを教えていただけますか?

盛山「conomeal(このみる)」は職人技の継承にも活かせると思います。
たとえば、AIで魚の脂の乗り具合や、魚に含まれている成分を分析できるようになれば、誰でも新鮮な魚を目利きできるようになって便利ですよね。料理の世界では、下積みが大変なこともあり、若手がどんどん減っていますが、便利なツールによって下積みの負荷を軽減できれば、もっと後継者を増やしていけるのではないでしょうか。
それと、プロ仕様の「conomeal(このみる)」も開発していただきたい。

関屋プロ仕様って、どんなものですか?

盛山フグやハモといった高級食材、珍しい調味料や香辛料なども選べるタイプです。一般向けでは、誰もが自宅で再現できる「おいしいレシピ」を提示する必要がありますが、プロ仕様では奇想天外な組み合わせのレシピを提示してもいいと思います。最終的には、料理人が「おいしいかどうか」をジャッジすればいい。新たなレシピ開発のヒントにもつながるはずです。AIと競い合うのではなく、AIと共存しながらお互いの長所を高め合っていきたいですね。

関屋前向きなコメントをありがとうございます。今後も一緒に「conomeal(このみる)」と、食の未来を盛り上げていきましょう!

 

プロフィール

レシピアドバイザー 盛山貴行

Conomeal六本木に構える日本料理店「粲(sun)」の総料理長。都内で料理人としてのキャリアをスタートさせ、26歳で渡米。ニューヨークの日本料理店「響屋」で5年間研鑽を積み、日米の経験を織り交ぜた独自のスタイルを築く。国内外のイベント出演や、料理監修など、幅広く活躍中。

このみる研究所編集長 関屋英理子

株式会社ニチレイで新規事業開発を担当。フードテックとの出会いをきっかけに、AIで食の好みを分析し、一人ひとりに合った食を提案するサービス「conomeal(このみる)」の開発をスタート。

この記事の著者のプロフィール

関屋英理子

このみる研究所編集長

株式会社ニチレイで新規事業開発担当。「conomeal(このみる)」と言う個人の食の好みを分析する仕組みを使った事業を開発するのが私の仕事です。 「conomeal(このみる)」を通じた食の楽しみ方、時々新規事業のことなどを発信していきます。

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