意外と知らないカトラリーの歴史

2020.11.07

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日常生活の中で何気なく使っているカトラリー(スプーンやフォーク、ナイフなど)は、日本の生活においては”洋風の文化”として洋食を食べる際によく使用されています。日本においては古の時代より中国伝来の「箸」を使っており、箸ほど毎食事のたびに必ず使うという物ではないですが、カトラリーが生活様式の中に溶け込んでいるのが言うまでもありません。

 

ではいつから、人はカトラリーを使って食事を楽しむようになったのでしょうか。お肉用・お魚用・スープ用・デザート用など種類も多く、テーブルマナーなどもあり、日本人にとっては頭を悩ませるシーンも多々あるカトラリー。そんな、カトラリーの歴史について紹介します。

 

中世ヨーロッパにおける富の象徴

 

中世以前のヨーロッパでは王侯貴族でさえも、食事するときは手づかみだったと言われております。12世紀に入り、水分の多いものはスプーンを使ってフォークは装飾品の一部となりました。ナイフは肉などを切り分けるのに使うことはあっても、個人で使うことはありませんでした。

当時、宗教的に”指は神様が与えられた優れた道具である”と教えられていたこともあり、「まぜる・つかむ・運ぶ」など、人々は手指を使って食事を食べていました。マナーの心得のある王侯貴族は親指・人差し指・中指の3本指を使ったとも言われております。

 

15~16世紀になると、ヨーロッパでは銀のカトラリーは富の象徴とされていました。人々はカトラリーを専用の箱に収めて大切に保管し、持ち歩き、宴席に持参していました。どんなに身分の高い人でも、自分が使うカトラリーは自分で持ち込んだと言われております。

参考 / 日本金属洋食器工業組合

 

最も早く食卓に並べられたナイフ

 

早い時期から食卓に並んだのがナイフと言われております。現在のように個人用として一つずつ置かれていることはなく、肉を切り分けるためのナイフがテーブルに一本だけ用意されており、道具としての意味合いが強かったようです。時代が15世紀に入ると、ようやく一人一人がナイフを使って食事をするようになりましたが、現代のように食卓に用意されていたわけではなく、個人がそれぞれナイフを持参する形で使われていました。次第に銀で作られたものなど、資産価値の高い高価なものも生まれるようになりました。

 

調理道具の一つとして使われたスプーン

 

「スプーン」はもともと汁物をくみ出したり、熱い鍋から肉などを取り出したりするために使われる調理道具の一つとして使われていました。古代エジプトの遺跡からの発掘物として、スプーンのような形状のものは発掘されています。ですが、それらは食事に用いられていたわけではなく、ヨーロッパ全土からエジプトまでの広範囲で化粧道具として用いられていたものとされています。

 

スプーンが現代と同じように使われるようになったのは、14〜15世紀ごろと言われております。当時は主にスープを飲むために使われましたが、上流階級の食事に限られた話とされています。その理由として、当時スプーンは高級品だったため、一般庶民には普及していなかったと思われます。庶民がスプーンを使うようになるのは17世紀頃になってからと言われています。

 

食卓に最後に上がったフォーク

 

ナイフやスプーンと違って、最後に食卓に上がったのがフォークでした。フォークが食事の道具として使われるようになったのは11世紀頃のイタリアで、ビザンチン帝国の姫君が未来の提督の元にお嫁入りした際、その祝宴の席でフォークを取り出して食べたのがキッカケと言われております。

食事の道具として日常使いされるのに時間がかかった理由として、”食べ物は神様からの授かりものであるから、手で食べるのが正当である。フォークを使うのは摂理に反する。”というキリスト教の宗教的な教えがあったとされています。長く手掴みで食べるスタイルに馴染んでいたために、一般的になるのに時間がかかったのかもしれません。

 

とは言っても、当時のフォークは今に比べ決して便利なものと言えなかったというのも理由にあり、フォークの形状が今のように何股かになっているのではなく、二股になっており、道具としての価値としては使いにくいために低かったと思われます。イタリアではパスタを食べるために16世紀頃からフォークを使用していたとされていますが、イギリスでは18世紀に入るまでは使用されず、ヨーロッパの各国でも使用の広がり方に差があったと言われております。

 

食卓で常備されるようになったカトラリー

19世紀に入ってようやく、各家庭にも銀のカトラリーを常備するようになりました。宴席の場合も招く側が用意するのが当たり前となったのがこの頃と言われております。また、当時は12人着席のディナーテーブルが基本だったため、カトラリーを含めた食器のセットは各種類とも12本単位で揃えていました。一人暮らしが多く、大家族の少ない現代の日本においてはそこまでの用意はないかもしれませんよね。

 

 

現代の食卓ではディナーテーブルの形状も作法を様々になり、それぞれの料理や食事スタイルに合わせてカトラリーも変化を遂げています。

カトラリーは人々の食事のしやすさに合わせて登場し、変化を遂げた、一つの食事の歴史なのかもしれません。

この記事の著者のプロフィール

杉浦 雄貴

株式会社バンドオブブラザーズ 代表取締役

クリエイティブカンパニー株式会社バンドオブブラザーズを2017年に設立。ファッション好き・音楽好きというのを背景に、"食"にまつわる様々なカルチャーについての記事をお届けします。

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