房州の鯨漁
千葉県南房総市(旧和田町和田浦)では決められた期間(7~8月)に決められた頭数の槌鯨漁(つちくじらりょう)が行われています。IWC(国際捕鯨委員会)で商業捕鯨は禁止されていますが、小型沿岸捕鯨については日本政府が管轄し合法的に行われていて、現在でも日本全国4か所で実施されています。北海道の網走、宮城県の鮎川、和歌山県の太地、そして千葉県の南房総市(旧和田町和田浦)の4か所です。夏になると地域新聞が鯨漁の開始を伝え、周辺でも鯨の肉が販売されるなど和田浦は活気づきます。

千葉県鯨漁の歴史
昔は陸に近づいてくる寄り鯨や迷い込んでやってくる迷い鯨を銛で突き捕るような、大型の獲物をたまたま捕獲する程度の漁だったそうで、当時は鯨だけを意識して捕ったわけではなかったようです。実際に鯨漁を本格的・組織的に行ったのは、江戸時代初期に鋸南町勝山の捕鯨家・醍醐新兵衛によりはじめられ、主に現在の神奈川県三崎町と千葉県館山市を結んだ線より北方の海域を漁場としながら江戸時代を通して明治まで漁を行いました。
現代ではすっかり鯨と言えば「和田漁港」というイメージが定着していますが、房州自体がもともと鯨漁が盛んな地域だったんですね。

明治半ばから30年代になると西洋の捕鯨技術が取り入れられて会社経営で行われるようになり、鋸南町から館山市、その後南房総市白浜などより漁場に近い南へと拠点を移していきました。そして現在は、この東海漁業株式会社から業務を引き継いだ外房捕鯨株式会社が、日本沿岸小型捕鯨を行っています。
ツチクジラの解体
和田町でのクジラの解体は、和田漁港に隣接した施設で行われていて一般にも公開されています。誰でも見学OKなのですが、解体日時はクジラが捕獲されてから決められるので事前には分かりません。ちなみに私は地域で良くしてもらっている飲食店から情報を貰ったり、和田の捕鯨会社が出す解体情報を確認して行きます。水揚げされるのはツチクジラという種類のクジラがほとんどだそうで体長は平均10メートルほど。

解体は専門の職人さんたちで行われ、大きな包丁のような道具でクジラをさばいていく姿は圧巻。解体の所要時間は1時間半から2時間程度で、解体時には観光客だけでなく地元の人も多く集まります。大きなナタのようなもので、ザクザクと皮をはいでウインチで一気に引っ張っる時、バリバリバリっと大きな音が場内に鳴り響き、一瞬声を失うほどの迫力でした。解体後にはその場でクジラ肉の販売もされ、それを楽しみにしている地元の人も多いようです。

鯨肉が買える地元スーパー教えます!
実はたまたま館山市役所の農水産課の担当者に、このみる研究所で紹介したいから地域食材が一番多く揃っている店を教えて欲しいと尋ねたところ、「ときわやだっぺ?」地元産の野菜と魚が豊富に揃ってて、特に鮮魚コーナーが充実しているから一度行ってみたらいいよと教えられ足を運んでみました。
「あー!ここ!」いつも通る道にあって看板はよく目にしてたけど、あまり聞きなれない名前のスーパーだったので店内に入ったことなかったかも‥‥

そこでなんと発見しました!「そう!和田の鯨肉が生で並んでます。」

やっぱり凄い迫力!まさにこの時期ならではの地産地消食材。 館山でキャンプなど地元食材を手に入れたい時は「ときわや」さんに是非寄ってみてください。

さてこのように珍しい鯨ですが、実は房総に点在する道の駅でお土産として手軽に購入することもできますので、アクアラインを渡ると鯨の国!そう思って訪れる際は鯨商品を見つけてみてくださいね。さて最後に2019年に私が撮影したツチクジラの解体動画がこちらになります。この日は早朝の解体で暗いうちから家を出て、始めてツチクジラの解体を目の当たりにしてとても衝撃を受けたことを覚えています。正直ちょっとグロテスクですのでご注意ください。
ではまた次回の房州の食をお楽しみに。